遺品整理における相続放棄のルールとは

血縁者が亡くなると、相続権が発生します。相続権が発生する人は、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などで、分配の割合については親等によって法律で定められています。相続は、遺言書と法律によって決められるため、ルールに則って物事を進めていくことが大切です。

このルールから外れてしまうと、思わぬトラブルに発展するケースもあります。ここではそうしたルールにのっとった上での相続放棄という選択肢について解説します。

相続放棄と遺品整理

相続というと、現金や土地、株式などの有価証券をイメージすることが多いですが、故人の資産は価値のあるものだけではありません。借金や負債といった負の遺産にも相続権が発生するのです。

こういった負の遺産を相続しないための方法としては、「相続放棄」があります。相続放棄をすることで、相続人の負担となる財産を放棄することが可能となります。相続放棄には、借金などの金銭的な負担の他に、損害賠償での支払いや賃貸住宅での原状回復といった事柄も含まれます。

しかし、相続放棄をスムーズに行うためには、注意すべき点があります。それは「遺品整理」です。

血縁者が亡くなると、その人が生活した空間を片付けるため、掃除や持ち物の処分を行うことがあるでしょう。故人のために良かれと思ってやったこの行動が、遺品整理と見なされると、相続放棄ができなくなる可能性があります。それは、掃除や持ち物を処分することで、相続を単純承認したと捉えられるためです。

もし、知識もないまま遺品整理をしてしまうと、家庭裁判所で相続放棄が受理されても、それに異議を唱える債権者が支払いを求めて裁判を起こした場合に敗訴するケースが考えられます。遺品を勝手に処分したことで、回収できるはずの資産まで廃棄したとみなされ、相続人として支払いを命じられるかもしれません。

このようなトラブルを避けるためにも、相続放棄を想定しているのであれば、遺品整理をしないことがベストです。すでに処分してしまったものがある場合は、記録に残しておくと良いでしょう。

ただし、遺品整理に該当しない範囲であれば、故人の品を片付けることもできます。ここでいう故人の品とは、住居にある日用品や家電、趣味の品などが該当します。現金や土地など、金銭的に価値のあるものは含まれません。もし、こういった価値のある資産を相続したいのであれば、借金や負債などの負の資産も同時に受け継ぐ必要があります。いらないものだけを相続放棄することはできません。

相続に関わる法律

基本的に相続放棄については、民法の第921条で「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、相続の義務が発生すると定められています。

故人が所有していた家電や趣味のコレクションなどは、単純にゴミとして処分するだけでなく、リサイクルショップなどに売却することもあるでしょう。たとえ少額であっても、故人の所有物を売ってしまうと、相続の意志があると考えられてしまいます。これは、法廷単純承認といわれる法的な措置です。

また、すべてをゴミとして処分しても、法廷単純承認と見なされるケースもあります。趣味のコレクションなどは、場合によっては、思いがけない高値が付くことがあります。そういった資産価値のあるものを処分したとして、相続人としての責任や過失を問われる可能性もあるのです。

しかし、血縁者が亡くなってから、持ち物を何一つ触ってはいけないわけではありません。常識的な範囲での「形見分け」は、遺品整理ではないとされています。故人との写真や思い出の品などを、形見分けとして整理することはできます。しかし、この常識の範囲という定義は、非常に曖昧で人によって解釈も異なります。貴金属や骨董品など、価値のありそうなものを選んでしまうと、たとえ形見分けであっても、相続放棄できなくなることもあるでしょう。

よって、相続放棄を想定した上で遺品整理をしたいのであれば、プロに依頼するのが安心です。相続放棄は法律の問題となってくるため、司法書士や弁護士など、法のプロに相談するのも良いでしょう。法律の専門家であれば、相続放棄ができる範囲での遺品整理の方法について、指導してもらえるはずです。ただし、司法書士や弁護士に依頼する場合は、それなりの費用が発生します。また、実際の片付けの作業のほとんどは、自分たちで行うことになるでしょう。

遺品整理業者に頼むという手も

もう一つの方法としては、遺品整理の専門業者に依頼する方法です。引越し業者や便利屋サービスと兼業で行っている業者もありますが、遺品整理をメインの業務としている業者も、全国で8000~9000社あります。

こういった業者は、相続放棄に関するノウハウも豊富で、スムーズな遺品整理ができるでしょう。また、実際の片付け作業も代行しているため、精神的・肉体的な負担も軽くなります。金銭的にも、法律家に相談するより費用を抑えることが可能です。

まとめ

相続放棄をするからといって、故人の住居をそのままにしていると、悪臭や傷みが発生するケースもあります。

特に、賃貸住宅の場合は、管理会社や大家さんに迷惑にならないよう、できるだけ早く責任の範囲内で片付けをするようにしましょう。