空き家を相続するときに気をつけるべき税金とその他の費用
いま、遺品整理のなかで最も難航するのが空き家の相続と考えられています。かつて土地と家の相続は他人からうらやましがられる「プレゼント」でしたが、いまや大都市の一等地でなければ、不動産はお荷物になるだけです。
買い手も借り手も見つからず朽ち果てて近隣住民の迷惑になるケースが増えていて、「迷惑空き家問題」は国土交通省が対策に乗り出す社会問題にすらなっています。
しかも「迷惑空き家」に認定されてしまうと、固定資産税が6倍になる恐れもあります。当然、相続税の問題もあります。
親などから相続した住宅を空き家にするときは、十分注意する必要があります。
空き家の固定資産税が「6倍になるルール」とは
固定資産税とは、土地や住宅を所有する人が市区町村に支払う税金です。
現在、住宅用の土地については、固定資産税が最大6分の1になる「住宅用地特例」というルールがあります。
しかし政府は、迷惑空き家対策の一環として空家対策特別措置法を制定し、「ある条件」にあてはまる空き家の土地の固定資産税については、この6分の1特例を認めないことにしたのです。
つまり「ある条件」にあてはまると認定されてしまうと、その空き家の土地のオーナーは、これまでの6倍の固定資産税を支払わなければならないのです。
「ある条件」とは次の4つのうち、1つでもあてはまることをいいます。
・倒壊の危険がある
・ゴミ、異臭、害獣などのため衛生上有害となる恐れがある
・景観を損なっている
・その他、周辺の生活環境の保全を図るうえで不適切な状態
これらのうち1つでも該当すると、その空き家は「特定空き家」と認定されます。もし特定空き家に認定されても空き家の状態を改善しなければ、強制的に解体撤去され、その費用はオーナーが負担しなければなりません。
もちろん厳格な審査が行われますし、特定空き家と認定されるまでに、自治体から何度も注意を受けます。注意を受けるなかで対策を取れば、特定空き家に認定されずに済みます。
しかし例えば、自治体が認定する「倒壊の危険」のレベルは日曜大工やDIYでなんとかなるものではありませんし、「衛生上の有害」も草むしりをして駆除剤をまいて終わりになるものではありません。
つまり根本的な対策を取らなければ特定空き家の認定は回避できず、そのためには相応の費用が必要になるでしょう。
空き家の相続税は複雑
空き家を相続すると、相続税を支払うことになるかもしれません。相続した不動産の額が「3,000万円+600万円×法定相続人数」を超えた場合、相続税を納付することになります。
例えば法定相続人が妻と2人の子供の場合、4,800万円(=3,000万円+600万円×3人)を超えると、相続税が発生します。
例えば、相続した土地と建物が1億円で、法定相続人が妻と子供2人の場合、4,800万円を超えるので、相続税を支払うことになります。
それぞれの相続額は、妻が5,000万円(=1億円×1/2)、1人の子供が2,500万円(=1億円×1/4)、もう1人の子供が1/4(=1億円×1/4)となります。
しかし相続税を計算するときは、先ほど紹介した4,800万円を「基礎控除」として1億円から差し引きます。1億円から4,800万円を引いた額を課税価格といいます。
妻の相続税額は、課税価格2,600万円(=5,000万円-4,800万円×1/2)に税率15%をかけ、50万円を控除した340万円となります。
1人の子供の相続税額は、課税価格1,300万円(=2,500万円-4,800万円×1/4)に税率15%をかけ、50万円を控除した145万円となります。
税率と控除額は相続した課税価格によって、以下のように変わります。
・課税価格1,000万円以下、税率10%、控除額なし
・課税価格3,000万円以下、税率15%、控除額50万円
・課税価格5,000万円以下、税率20%、控除額200万円
・課税価格1億円以下、税率30%、控除額700万円
・課税価格2億円以下、税率40%、控除額1,700万円
・課税価格3億円以下、税率45%、控除額2,700万円
・課税価格6億円以下、税率50%、控除額4,200万円
・課税価格6億円超、税率55%、控除額7,200万円
ただ相続税の計算は、土地や建物以外の相続も関係しますので、計算方法はさらに複雑になります。相続する額が大きくなるほど相続人間のトラブルが発生しやすくなるので、早めに相続税の相談をしておいたほうがいいでしょう。
相続した空き家は「売れるなら売ってしまう」が得策
先ほど少し触れましたが、迷惑空き家については国が本格的に対策に乗り出しています。さらに国土交通省から指導を受けている市区町村も動き始めていて、件数は大きくありませんが迷惑空き家(特定空き家)を強制撤去した事例は全国にあります。
また、日本の土地の価格は上昇傾向がみられる地域もありますが、かつてのような「土地神話」は起きない公算が大きいとされています。
相続した空き家とその土地に対して、「なんとなく保有していればそのうち値が上がる」と期待することは得策とはいえません。
そのため、相続した実家が空き家になるようなら、売り手がつくなら売ってしまったほうが得策といえるでしょう。
生まれ育った家を売りたくない、という気持ちがあったとしても、時間が経つほど空き家は朽ち果てていき、売りにくくなります。しかもその間、固定資産税を支払い続けなければならないのです。
空き家の税金以外の出費
空き家を相続した方は、迷惑空き家に認定されないようにしなければなりませんが、それには住宅のメンテナンスが必要で、お金がかかります。
空き家を見回るサービスを、警備会社や不動産会社などが行っています。費用は月1回の見回りや簡易な手入れがついて、月額数万円以下が一般的です。
また、空き家を貸すつもりの方は、リフォームや庭の手入れをする必要があります。リフォームには、水回りだけを新しくする数十万円コースもありますが、付加価値をつけようとすると「リノベーション」という方法もあります。
リノベーションは間取りを現代風にするなど大がかりな内容で、数百万円~1千万円近くかかりますが、販売しやすくなるメリットがあります。上手にPRできれば、リノベーション費用を上乗せして売れるかもしれません。
ただ、良心的でないリフォーム会社やリノベーション会社だと、「リフォームやリノベーションをすれば必ず売れます」などと言葉巧みに誘うこともあります。しかし大抵は販売を確約しているわけでないので、注意が必要です。