終活は何から始めたらいいのか?
終活という言葉は一種の流行語になっています。終活とは、人生の終え方を自分で決める活動のことです。
自分の死についてあからさまに語り合うことは、2010年より以前にはあまりありませんでした。しかし超高齢社会であり多死社会になったことで、死が身近なテーマになりました。死をタブー視しない雰囲気が広がったことで、「誰にも迷惑をかけないように死にたい」と明言できるようになったようです。
終活はいま、前向きな行動としてとらえられています。
死が身近になり「よい死に方」を探求するようになった?
終活に興味を持つ人が増えたのは、死が身近になったからではないでしょうか。
日本国内の日本人の死者は、2016年は約130万人でしたが、これが2040年には166万人になると推計されています。
国内の成人(18歳以上)の数は、2015年は1億407万人でした。成人の数が変わらないとすると、2016年は成人1,000人当たり12人が亡くなっていましたが、2040年には成人1,000人あたり16人が亡くなる計算になります。計算式は以下のとおりです。
130万人÷1億407万人=0.012人
166万人÷1億407万人=0.016人
例えば人口1,000人の地区があったら、2016年は年間12回の葬式が行われたことになります。大体月1回葬式がある計算です。
ところが2040年には年16回開くことになるので、葬式が2回開かれる月が4回もあることになります。
自分の周囲に亡くなる人が増えたり、葬式への出席回数が増えたりすることで、他人の死にざまを観察する機会も増えます。
つまり日本人の多くが「あの人のような死に方をしたいものだ」などと考えるようになるのは、自然なことなのです。
そうなれば「よい死に方をするにはどうしたらいいだろうか」と考えるようになるのも、これまた自然なことといえるでしょう。
この考え方こそ、終活を始める動機になっているのではないでしょうか。
自分の死で迷惑をかけたくない
「よい死に方」のひとつに、遺された人たちに迷惑をかけない、というものがあると思います。したがって終活は、「遺される人が何を迷惑に感じるか」を考えるとうまくいくかもしれません。
遺される人の迷惑として、
1:相続のトラブル
2:不動産の処置
3:物品の処置
4:葬儀や墓のこと
などが考えられます。
また認知症や意識不明の状態から死に至ると、当人はその間、周囲の人に意思を伝えることができません。
そこで、
5:認知症を発症したり意識不明に陥ったりして助かる見込みがないとき
についても「遺された人の迷惑」として考えていきましょう。
もちろん、家族や親族が1~5までを迷惑に思わないこともあるでしょう。しかし終活は「自分が」「自分の納得のために」行う活動なので、自分が「これは家族の迷惑になるだろう」と感じたら、その対策を講じておいたほうがよいのです。
終活はこのようなことをしてはいかがでしょうか
それでは、自分が死んだときに遺された人たちが迷惑を感じないようにする方法を考えてみましょう。
以下の内容は終活の「やることリスト」としてとらえてみてください。
もちろん全てを行う必要はありませんので、できそうなもの、興味があるものを参考にしてみるのが良いでしょう。
1:相続のトラブルを回避するには
もし多額の財産を保有しているのであれば、しっかりとした遺言を遺しておかないとトラブルになります。遺言づくりは終活の第1歩目にして最重要課題といっていいでしょう。
遺言の内容は秘密にしておきたいという心理が働きます。なぜなら誰かに多く財産を遺したい希望を持っていた場合、それを生前に明かしてしまうと目の前で親族の争いをみることになってしまうからです。
遺言は自分でひっそり書いて遺すこともできますが、記述内容や文面に法律的な不備があると遺志を実現できなくなってしまいます。
そこで法律で定めた手続きにそって遺言をつくる、公正証書遺言がおすすめです。これなら公証役場という役所がその遺言にお墨付きを与えるので、遺志を確実に実行できます。
公正証書遺言の作成は、行政書士事務所などが手伝ってくれます。
2:不動産の処置の迷惑を回避するには
自分が持っている不動産の財産的な価値が高い場合、上記の相続と一緒に解決することができますが、昨今問題になっているのは、買い手がつかず老朽化して近隣の迷惑になってしまう空き家です。
老朽空き家については国土交通省や都道府県、市区町村など、全国の行政組織が対応に追われるほどの社会問題になっています。
そこで、いま住んでいる持ち家に自分の死後誰も住まないことが確実な場合、その処分の道筋をつけておくことは重要な終活になるでしょう。
思い立ったら一度、不動産会社に相談してみることをおすすめします。また土地ごと住宅を市区町村に寄贈する方法の検討も有効です。
もちろんその前に、家族の意向を尋ねておいてください。都会に出ていった子供が、実は再び故郷で暮らしたい意向を持っているかもしれません。そうなれば思い出深い自分の家を老朽空き家にしないで済みます。
3:物品の処置の迷惑を回避するには
終活をする人のなかでは50~60代は「若い」部類に入るので、いきなり遺言や持ち家の処分を検討するわけにはいかないかもしれません。
しかし50~60代の方でも終活に興味をもったら、せっかくですので不要物の処分に着手してみてはいかがでしょうか。断捨離は終活ととても相性がいいのです。
自分が不要物だと思っても、子供や親戚が求めるかもしれません。そこで断捨離に着手する前に、引き取ってもらえるものがあるかどうか、子供や親戚に相談してみてはいかがでしょうか。
子供が「生前に形見分けをするようで縁起が悪い」というかもしれませんが、それも家族で終活について考えるよい機会になると思います。そうした相談や話し合いから、終活のよいアイデアが出てくるかもしれません。
4:葬儀や墓の面倒を回避するには
自分の葬儀をどのような内容にしてほしいのか、または、どの墓に入りたいのか、それとも散骨を望むのか。こういった要望は、しっかり家族に伝えておきましょう。
また最近は、葬儀会社でも終活を支援する相談サービスを行っています。
家族も、故人が望むような葬儀を執り行いたいと思っているはずです。自分の「喪主」になる家族とじっくり話し合ってみてはいかがでしょうか。
5:認知症を発症したり意識不明に陥ったりして助かる見込みがないときに備えるには
高齢者が極度に衰弱したり重度の認知症が発症したりすると、理性的な言動が取れないまま亡くなる可能性もあります。余命が長くないことが明らかな高齢者が急変に陥ったとき、家族も医師も「延命させるかどうか」で悩むはずです。しかも本人の意思を確認することもできないので、なおさら悩みます。
そこで終活として「リビングウィル」を作成しておくことをおすすめします。これはどのような医療を受けたいか、どのように終末期を送りたいかを示すものです。
千葉県医師会が作成した「私のリビングウィル」を使えば、以下のような要望を書き記すことができます。
・延命を目的とした医療処置を「すべて希望する・すべて希望しない・一部を希望する」
・自分の口から栄養を摂れなくなったら胃ろう(経管栄養)を「希望する・希望しない」
・自力で呼吸ができなくなったら人工呼吸器の装着を「希望する・希望しない」
・自力で心臓が動かなくなったあら心臓マッサージやAEDを「希望する・希望しない」
・痛みに応じた鎮静剤を「希望する・希望しない」
そのほか、終末期に療養したい場所や看取ってほしい人なども書くことができます。
「私のリビングウィル」は以下のURLで公開されていますので、印刷して記入し、大切な人に渡しておいてもいいでしょう。
http://www.chiba.med.or.jp/personnel/nursing/download/mylivingwill_h30_2.pdf