個人事業主・ひとり会社の仕事の遺品整理

故人様がお亡くなりになられた場合、生前

 

・個人事業主

・ひとり会社の社長

 

とたった1人で仕事をされていたということも少なくないでしょう。

お通夜、葬儀、初七日、四十九日とあっという間に過ぎ、これから相続、遺品整理について動き出そうと考えていた矢先、突然、見知らぬ人が家に。

 

「○○○○さんのお宅ですか?」

「はい。○○は亡くなった主人ですけども」

「亡くなった!?」

「はい」

「いつまで経っても連絡取れないわけだ。お線香をあげたいのですが…」

「え、ええ。ど、どうぞ」

 

遺影の前で手を合わせた男性は、50歳前後の背が高くやせ型のビジネスマン風で、スーツの襟元には金色に光るバッジが…

 

「あの、もしかして弁護士さんですか?」

「ええ。申し遅れました。私、弁護士の○○です」

「でも、どうして主人のことを?」

「実は私、○○株式会社の顧問をしておりまして…」

「○○株式会社ですか?」

「ご主人様はフリーランスで仕事をされていたのでは?」

「え、ええ。個人事業主としてオフィスを借りて仕事をしていました」

「顧問先である会社がご主人に業務を依頼していたのですが、納期をとうに過ぎているのに納品もなく連絡もなく、会社の担当者が連絡しても訪問しても不在のため、調査してほしいとのことで、ご自宅を調べさせていただいたのですよ」

「でもどうやって? わかったのですか?」

「担当者が世間話で、ご主人がこのエリアに住んでいるということを聞いていたため、○○の名字の家を片っ端から調べたんですよ。うちの事務所のスタッフが」

「そうだったのですね。ではいろいろとご迷惑をおかけしたのでは?」

「着手金をお支払いしていたため、その分の返還は求めたいですね。場合によっては損害賠償も辞さないつもりでしたが、事情が事情ですから…」

そのあと弁護士の先生は、その会社の社長さんに電話され、主人が亡くなったことを報告していたのですが、その後、思いもよらない展開になりました。

その夜、会社の社長さんが来られ、遺影の前で線香を立て、手を合わせ、帰り際に「お支払いした着手金はそのまま受け取っておいてください。納期は早期設定していたので損害は発生していませんから気にしなくていいです。何か困ったことがあったらうちの弁護士になんでも相談してください」とだけ言い残し、帰って行かれました。

そして仏壇にはお香典が置いてありました。

このように個人事業主やひとり会社の社長が亡くなると、取引先やクライアントに多大な迷惑をかける可能性があります。

残された家族は突然のできごとに悲しみが大きく、なかなか動けないでしょう。

縁起でもないと思われるかもしれませんが、今まさに個人事業主やひとり会社の社長である方は、残された家族が路頭に迷わないよう、生前、やっておいたほうがいいことがあります。

仕事版のエンディングノートを作成する

仕事版のエンディングノートも用意しておきましょう。

そこには

・鍵(仕事場入口・金庫・車など)の在り処

・亡くなった場合に知らせるべき機関や取引先

・生前お世話になった人や会社のリスト

・業務関係の契約書の在り処

・借入先・借入金をまとめた一覧表

・重要書類や会社印の保管場所

・通帳やキャッシュカードの保管場所

・機密書類の処分又は保管方法

・パソコンのパスワード

・仕事を引き継いでほしい人のリスト

・備品一覧(処分していいもの、リース品で返却すべきもの)

・個人事業・会社清算の手順

を書き記しておきます。

そうしておくことで残された家族が路頭に迷うことはなくなるでしょう。

しかしなかには、これらの用意もすることなく突然、仕事や会社を残し、お亡くなりになる場合があります。その場合、遺族はどのようにすべきでしょうか。まとめました。

個人事業主・ひとり会社社長の家族が対応すべきこと

オフィスや仕事場を確認する

オフィスや仕事場に入り、営業許可証、顧客リスト、契約書、重要書類、会社印、通帳やキャッシュカード、パソコンをひととおりチェックしましょう。もっとも大切なのは、やりかけた仕事が放置されていないか、迷惑をかけている顧客や取引先がいないかの確認です。

まずはオフィス等が賃貸であれば大家や管理会社に、借主が亡くなった旨を知らせます。その際、退去日や明け渡し日などをその場で決めず、後日、改めて連絡するようにしましょう。

仕事上の上部組織があれば連絡する

弁護士なら弁護士会、医師なら医師会、お店を展開しているのであればFC本部などに連絡を入れるようにします。そして亡くなった場合の手続きについて教えてもらうようにします。

郵便物を転送する手続きを取る

オフィスや仕事場が自宅から近ければこまめに郵便受けに取りに行けばいいのですが、遠方ですとそうはいきません。郵便局やヤマト運輸なら転送サービスがありますので活用しましょう。

転送で郵送物が届きだしたら、開封して明らかに顧客や取引先なら、返信するか連絡して、事情を説明しましょう。

遺品整理業者に相談する

オフィスや仕事場を片付けるとき、悪質なリサイクル業者に依頼すると、値打ちのあるものだけ持って帰り書類だけ置いて行かれ、悪質な便利屋に依頼すると、機密書類や重要書類、個人情報などがたくさん入った箱を無造作に山奥に捨てられることもありえます。

会社やオフィスの荷物なのですが、ここも遺品整理士が在籍する遺品整理業者に片付けを依頼されたほうが、機密書類や重要書類の処分も適正に行ってくれますし、買取もできる遺品整理業者ならOA機器や工具なども高値で買い取ってくれる場合もあります。

 

まとめ

個人事業主・ひとり会社の社長なら仕事版エンディングノートを作成します。また遺族の方はまずオフィスや仕事場に行き、上部組織に連絡します。そして郵送物を転送し、遺品整理業者に相談するようにしましょう。