昨今の孤独死に見られる事情と対処方法
年々増えてきているといわれる孤独死。
誰にも看取られず、亡くなったことさえ誰からも気づかれない。非常に寂しいことのようにも感じられますが、決して他人事ではないという方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、孤独死の増加の社会背景はなんなのか、そして孤独死を避けるためにはどうすればいいのか、また孤独死を発見してしまったらどうするか、といった点について解説していきます。
1.孤独死と孤立死
孤独死と似た概念として、孤立死というものがあります。
両者を比べることで、孤独死を詳しくみていきましょう。
(1)孤独死とはどんなものか
まず孤独死とは、主に自宅において、独りで死を迎えることをいいます。
これは法的な用語ではなく、一般的に用いられる言葉です。
似た言葉に「独居死」や「孤立死」がありますが、独りで亡くなるという意味では重なっています。
なお、病院などで亡くなる場合や、病気によって死亡する場合、あるいは自死といった場合は孤独死とは呼ばれません。
警視庁の死因統計では、「変死」に分類されます。
(2)孤立死とはどんなものか
これに対して孤立死とは、社会的に切り離された状況において独りで死ぬことをいいます。
これも法的な用語ではありませんが、たとえば厚生労働省や地方自治体の行政文書などでは孤立死のほうが用いられる傾向にあり、行政機関では社会問題としての孤立死対策を重視していると考えられます。
2.増えつつある孤独死
孤独死や孤立死は増加傾向にあるといわれます。
そこで次に、統計データなどを通じて、孤独死や孤立死の件数やそれらが生じる社会的な背景をみていきましょう。
(1)孤独死の統計データ
「高齢社会白書」という、政府が毎年国会に提出している年次報告書があります。
これは高齢化の状況や高齢社会に対する施策を取りまとめたものですが、その中に孤独死や孤立死についての報告も存在します。
これに引用されている東京都監察医務院の資料によれば、東京23区内の65歳以上の一人暮らしの方の自宅での死亡者数は、平成28(2016)年で3179人となっています。
ちなみに平成15(2003)年には1451人で、多少の増減はあるものの、概ね右肩上がりの状態となっています。
(2)他人事ではない孤独死
同白書の引用する、全国の男女を対象とした内閣府の意識調査によれば、60歳以上で孤独死(孤立死)を身近な問題と感じている一人暮らしの方は、多く存在します。
すなわち、60歳以上の者全体では17.3%であるところ、一人暮らし世帯では45.4%と、4割を超えているのです。
それだけ一人暮らしの方々にとっては、孤独死や孤立死というのが他人事ではないということになります。
(3)孤独死や孤立死の起こる社会的背景
では、このように孤独死や孤立死が増えていることには、どういった社会的背景があるのでしょうか。
まず挙げられるのは、核家族化による高齢者と若年者の非同居化でしょう。
親世代と祖父母世代が同居しなくなり、そうした中で育ってきた子供世代も、成人して親と同居しないのが一般的だという考えが定着し始めました。
そうすると、高齢者の体調の変化を身近に観察できる立場の親族がいなくなるため、急な体調悪化などに対処できなくなるのです。
次に、地域社会の連携の希薄化が挙げられます。
特に都心部やマンションの立ち並ぶ地域では、隣の部屋に誰が住んでいるのかすらよくわからないというケースも少なくありません。
かつては町内会や地域の祭りなどの行事を通じ、近隣の住人たちが助け合って暮らすのが一般的でした。
そうした関係が絶たれると、ひっそりと家の中で倒れても気づかれることなく死に至ることになってしまいます。
さらに、現代の生活自体が引きこもりや他者との関わりの減少を促しているともいえます。
厚生労働省の統計によると、婚姻件数や婚姻率は年々下がっており、一人暮らしの人間は増えています。
また、通販などが発達し、家から出ずに生活をおくることも可能となっており、より他者との関わりを持つ機会が減っているのです。
3.孤独死の防止策と孤独死を発見した場合の対処法
では、孤独死を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
また、万一親族や知り合いの孤独死を発見してしまった場合は、どう対処すればいいのでしょうか。
いざという時に備えて知識をつけておきましょう。
(1)孤独死を防ぐには
孤独死の防止には、まず何といっても他者との関わりを持つことが大事です。
歳を重ねるごとに知り合いは減ってゆく傾向にありますが、常に新たな関係性を探し、構築していく努力が求められるでしょう。
また、経済的安定性も重要です。
栄養のある食事を取り、環境のよい住環境を整え、不調を感じたら病院へ行くこと。
これを実現するには、やはりある程度の経済的な安定性は必要といえるでしょう。
趣味の同好会やコミュニティ、町内会、グループホームなどへの入居といった、各種の公的・私的サービスを利用してみるのもいいかも知れません。
いずれにせよ、他者との関わりを億劫がらず、充実した日々を過ごすことが大切です。
(2)孤独死を発見したら
しばらくぶりに親族や知り合いの家を訪れたら、そこが孤独死の現場だった、ということもあり得ます。
こんなときには、まず警察への通報を行い、それから特殊清掃や遺品の整理といった過程を経ることとなります。
慌てず、落ち着いた対応をすることが大事です。