「福祉整理」で住環境をライフスタイルに合わせよう

WHO(世界保健機関)が毎年発表している『世界保険統計』の2018年度版によると、男女の平均寿命は日本が84.2歳で、世界第一位となっています(掲載データは2016年度のもの)。

★参照 World Health Statistics 2018: Monitoring health for the SDGs P.62

このように「長寿大国」と言われる日本において、もはや「老後」は短い期間ではなく「第二の人生」と言うべきです。

そうなると、定年後のライフスタイルの変化に備える必要があるでしょう。

中でも見落としがちなのは、住環境。若い時とはまた異なった観点から住みやすさを追求しなければなりません。

そのために重要な「福祉整理」の内容と、そのメリットについて解説していきます。

1.福祉整理とは

老後を迎え、日々の暮らしも様変わりします。

住環境を老いに合わせるための「福祉整理」とは、どのようなものでしょうか。

(1)高齢者の生活のための福祉整理

高齢となれば、体力・気力的な問題などもあり、自分で住環境を整えるのがかなりの負担となってきます。

特にたくさんのこまごまとした物や、大きく重い家具を処分するのは大変です。

そうした際に、高齢者に代わって家族ないし業者が住居を整理・清掃することを「福祉整理」といいます。

住居に本人が住み続ける場合はもとより、本人が施設などへ移る際の片付けも福祉整理に含まれます。

(2)生前整理や老前整理との違い

福祉整理と似た概念として、生前整理や老前整理があります。

比べることで、より福祉整理について明確にしていきましょう。

まず生前整理は、遺品整理を本人が生きているうちに行うことをいいます。

亡くなった後のための準備を、前もって行うのが生前整理なのです。

次に老前整理は、本人に体力や気力が充実しているうちに、自らの老後に備えて所持品や財産、人間関係などを整理しておくことをいいます。

老後のための準備を、前もって行うのが老前整理なのです。

福祉整理は、本人が高齢となってから、家族や業者が、本人のために行う整理という点で、生前整理や老前整理と異なるわけです。

2.福祉整理の必要性

福祉整理はどうして行うべきなのでしょうか。

利点について確認しておきましょう。

(1)住環境が乱れていく原因

一般に、住人が高齢となれば家の中は散らかっていきがちです。

理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 体力・気力の衰え
  • 体調不良
  • 不調などに備えた日用雑貨・食料品の買いだめ
  • 食欲の低下による消費の減少
  • 孤独感を紛らわせるためのペットによる抜け毛や糞など
  • 思い出を保持するためのアイテムを捨てられない
  • 思考や生き方が保守的になり、環境を変えたがらなくなる

高齢となれば体力の衰えを実感し、それへ備えるようになります。

その結果、かえって物が増え、片付けが大変になるという事態が生じます。

また、孤独感や寂しさを紛らわせるためのアイテムを処分しにくくなり、ペットの世話にも十分手が回らなくなるといったことから、家の中が雑然としてしまうケースもあります。

(2)福祉整理を行うことのメリット

住環境を整理するのは、単に見た目がスッキリするというだけではなく、他にも様々なメリットをもたらしてくれます。

第一に、高齢者本人の健康維持や増進に繋がります。

ホコリやカビ、ダニを除去することで、衛生的にも良い環境が整えられるのです。

また、物を整理することは、転倒事故の防止にもなります。

第二に、利便性を良くすることが挙げられます。

高所の物を取りやすい位置に下ろしたり、奥にある物を手前に置き直したりすることで、足腰の弱った方でも物を取り出しやすく収納します。

第三に、家族の方も安心できるという点も大きいでしょう。

特に離れたところに子供の世帯がある場合には、高齢者本人の健康やケガのリスクを排除できるのは大きいといえます。

さらに、物の整理は生前整理としての側面もあるため、いざというときの備えにもなります。

3.福祉整理を業者に依頼する場合

福祉整理は家族や親族だけではなく、業者に依頼することもあります。

業者へ依頼した場合の利点や選び方についても見ておきましょう。

(1)福祉整理の難しさ

子供や親族がいないか、いても近くに住んでいないケースでは、福祉整理は難しいものです。

また、離れて暮らす家族が家の中の片付けを望んだとしても、本人が難色を示すこともあるでしょう。

かといって、本人だけで全て片付けるのは大変です。

(2)業者に依頼することのメリット

専門の業者への依頼には、短期間で片付く上に、片付けの労力が不要という利点がまずあります。

加えて、整理・分別・処分・リサイクル・清掃を総合的に行ってもらえるので、複数の業者に依頼する手間や取りまとめの負担がないという点も大きいでしょう。

たとえば、両親の住む家を住み心地の良いように整理したいけれども、なかなか片付けの時間が取れない、といった場合には、業者に依頼して休日のうちに一気に整理を進めてしまうのも手です。

(3)業者の選び方

福祉整理業者は探せばいろいろと見つかりますが、サービスの質は様々です。

選び方としては、以下の点に着目するとよいでしょう。

・料金やサービス内容が明確かどうか

・見積もりをしっかりしてくれるかどうか

・福祉住環境コーディネーター資格保持者の有無

逆に、サービス内容の説明や見積もりの時点で不審だったり不親切に感じられたりするような業者は、避けておくのが無難です。

まとめ

年を取ると片付けも億劫になり、また物の処分自体に自身の死を重ねて抵抗を感じることもあります。

しかし、整理されていない住居は物を取り出しにくかったり、転倒リスクを増加させたりというように、高齢者のライフスタイルと合致しないものです。

福祉整理を行うとによって、快適な住居で、より良い生活を送れるようになります。

住環境から老後の生活を素敵なものに変えてみませんか。