綺麗な服で最期を飾りたい……エンディングドレスとは
社会の成熟に伴って、自分らしさを大切にする人が増えてきています。
自分らしい髪型、ファッション、車や家、仕事、そしてライフスタイル。
「人と同じでありたい」という願いもあれば、「人とは少し違うオリジナルな自分でいたい」という望みもあるでしょう。
そうした思いの一つの現れとして、現在「エンディングドレス」が人気となっています。
やがて迎える人生のエンディングに向けて、どのような自分で在りたいのかが問われているのです。
今回は、エンディングドレスとはどういうものなのか、その特徴やメリット、価格、着せる際の注意点などについて解説していきます。
1.エンディングドレスの特徴とメリット
(1)お別れを美しく彩るために
エンディングドレスとは、一種の死に装束のことです。
死に装束とは死者に着せる衣装を言い、世界中の文化圏において見受けられます。
たとえば仏教文化圏では「経帷子」や「経衣」と呼ばれるものが、欧米の文化圏では「フューネラルドレス」と呼ばれるものがあります。
ただ、エンディングドレスが一般の死に装束と異なる点は、その人物なりの個性や選択を反映するものだというところです。
つまり、当人の信仰する宗教や属する文化によって予め定められた衣装ではなく、生前の本人が自分の意思で選択できるものなのです。
中には生前のお気に入り服を着たいという方もいれば、専用のドレスを選ぶ方もいます。
多様な選択肢の広がりが、個性の反映を可能としたのです。
(2)着せやすさと見映えの両立
衣装としてのエンディングドレスの特徴は、ご遺体にも着せやすいことと、お化粧とのマッチングにあります。
まず、ご遺体は時間が経つと硬直してしまいますので、そうした場合にも無理なく着せられるようなデザインとして形作られます。
その意味で、生前のお気に入り服だとしても、ジーンズなどはエンディングドレスとしては不適ということになります。
次に、いわゆる死化粧と合わせた際に馴染むかどうかも大切です。
普段暮らしているときでも、ファッションとお化粧は合わせるものですが、それは人生のエンディングにおいても同様なのです。
(3)エンディングドレスのメリット
エンディングドレスには、次に挙げるような様々なメリットがあります。
①個性の反映
故人が何を好み、どういう人だったのか、人となりや個性をファッションに反映させることができます。
②美しい姿で最期を迎えられる
「亡くなった時まで美しく在り続けたい」という故人の願いに応えることができます。
③ご遺体の傷などを覆い隠せる
傷跡や手術痕、火傷や痣、痩せ細っているといったご遺体の状態を隠し、安らかなものとして見送られることができます。
④葬儀をセレモニーとして演出できる
非日常感を醸し出すことで、ご遺族の心理的な負担も軽減することができます。
2.エンディングドレスを着せる際の注意点
(1)色合いやデザイン
ご遺体の状態からは、ゆったりとしたデザインであることが求められます。
そのため身体に密着するような服や固い素材の服は、着せられないこともあります。
伝統的な死に装束の色は白ですが、エンディングドレスにはピンクや花柄もあり、ピンクが多く選ばれています。
(2)湯灌によるエンディングドレスの着付け
仏式の葬儀では、納棺前にご遺体を洗い清める「湯灌」を行います。
これにより関節が柔らかくなり、エンディングドレスも着せやすくなることがあるのです。
ただし、仏式の葬儀でない場合など、湯灌を行わないときには、どうしても着せられないこともあるでしょう。
そうしたケースでは、ご遺体の上にドレスを置いて着用に見立てることもあります。
(3)火葬に適したものを選ぶ
基本的には、ご遺体に何を着せても問題はありません。
ただし、プラスチック製品や金属製品、ゴムといった火葬に馴染まない素材は、火葬の際に断られることもあります。
その他、密封容器や水分の多く含まれた果物、メガネ、厚い本なども棺に入れるべきではないので、注意すべきでしょう。
専用に仕立てられたエンディングドレスは素材まで考えられており、火葬の際に問題となる心配は要りません。
3.エンディングドレスの捉え方
(1)素材やデザインにより価格も様々
エンディングドレスの価格は、かなり幅があります。
ただ、専用に仕立てる場合、シルクサテンやオーガンジーといった素材を用いるので、高価になりがちです。
デザインとしては、レースやコットンパール、フリルなどをあしらうことが多く、ポーチや数珠、手袋、ソックスなどが付属するものもあります。
だいたいの相場としては、3万~27万円ほどです。
(2)「最後の親孝行」としても
故人が年老いた母などであれば、親孝行としてエンディングドレスを着せるご家族もいらっしゃいます。
もちろんご本人が選ぶことで自分らしさを演出してもいいですし、コミュニケーションの一環としてご家族が選ぶのもいいでしょう。
いずれの場合も、家族の在り方やご本人の意思と関わってきます。