終の棲家を選ぶ際に意識しておきたいこと

終活や生前整理において「終の棲家」、すなわち自分が最終的にどこへ住むかを検討することは重要です。

終の棲家といっても、自宅や病院のほか、老人ホームやケアハウス、「サ高住」など、現代社会ではその選択肢が様々にあります。

ここでは、後悔しない終の棲家の選び方を、生前整理や遺品整理との関係で解説します。

1.終の棲家と様々な選択肢

(1)「終の棲家」をどう選ぶか

自分が亡くなるまでに住む場所を、どのように選べばいいのでしょうか。

これにはいくつかのポイントがあります。

まず、どこで、どういう住居に暮らすかというのが第1のポイントです。

思い切って国外で暮らすという道もありますし、都会から地方へ、地方から都会へという移動も考えられるでしょう。

後述するように、住居の選択肢も様々にあります。

これに加えて利便性や快適性、周辺住民の性質などが第2のポイントとなります。

病院やスーパーがすぐ近くにあるか、反社会的な住民がいないか、といった点です。

そこに住むメリットだけに目を向けるのではなく、デメリットがないかどうかも考慮した上で選ぶといいでしょう

(2)「終の棲家」の選択肢

具体的な選択肢としては、以下のようなものが挙げられます。

・自宅

一戸建てと集合住宅(アパート・マンション)とがあります。

長年住み慣れた家は落ち着きますし、急いで私物を片付けなくともよいという利点もあります。

他方、いざという時の対応が遅れがちになったり、そこで亡くなることで資産価値の低下を招いたりすることがあります。

・ケアハウス

ほとんど介護はいらず、自立した生活を送ることのできる高齢者向けの施設です。

雰囲気が明るく、孤独に苛まれる心配がいらないという利点があります。

ただ、体調や病気などが悪化し、本格的な介護が必要となった場合、対応し切れずに退去を求められる可能性があります。

・サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)

高齢者専用のバリアフリー住宅にて、生活相談や安否の確認などのサービスを受けられます。また、個別契約による訪問介護サービスもあります。

「地域包括ケアシステム」を広げる一環として、2011年に創設されたものです。

自由度が高く、高齢者という理由で入居を断られないというメリットがある反面、施設ごとのサービスに差があったり、家賃がそれなりに高額だったりという問題もあります。

・グループホーム

認知症の高齢者を対象として、5~10名ほどで共同生活をする施設です。

支援や介護だけではなく、一定の訓練も受けられます。

医師から認知症の診断を受けた高齢者が入居できますが、空きがなければ入居が難しく、そのグループホームがある市町村の住民票がなければ入れないといった要件はあります。

医療というよりは生活援助がメインとなるため、医療ケアについてはあまり期待できません。

・有料老人ホーム

自宅での介護が困難となった高齢者へ向けた施設であり、健康の管理のほか、様々な介護サービスが受けられます。

その分、入居時に掛かる一時金や月ごとの費用は高くつく傾向にあります。

・特別養護老人ホーム

有料老人ホームと同様のサービスを受けられ、しかも入居に要する費用が比較的安いというメリットがあります。

ただ、入居を希望する者が多く、空きが見つかるまでに相当の時間が掛かるという難点もあります。

2.住居を移すときに気をつけたいこと

(1)環境の変化

終の棲家を考える場合、ただの引っ越しと同じように考えるわけにはいきません。

  • 気候や食事が自分に合っているか
  • 病院や食料品店などが近くにあるか
  • バリアフリー設計との兼ね合い
  • インターネット環境
  • 近隣の人々との関係

このように、様々な環境の変化が生じるためです。

たとえば気候が変われば体調も崩しやすくなりますし、病院が近くになければ体調を崩したときに対応が遅れます。

住居は、単に建物や場所の問題ではなく、周囲の環境とも密接に関わってくるのです。

(2)家財道具の整理

終の棲家の検討は、生前整理とも繋がります。

現在住んでいる家を引き払うのであれば、「様々な物をどう片付けるか」ということを考えないわけにはいきません。

費用や時間も掛かりますし、場合によっては税金(贈与税など)との兼ね合いもあるので、計画性が必要となるでしょう。

(3)方々への連絡

また、環境の変化は人間関係の変化にも繋がります。

親族やご近所の方々への引っ越し連絡や、郵便物の転送連絡などを忘れずに行っておきましょう。

どこまでの範囲の相手に連絡をするかも悩みどころです。

これは、携帯電話の番号が変わったときに連絡する範囲や、年賀状の遣り取りをする相手を考えると参考になります。

3.生前整理の始め方

(1)同居人や家族との話し合い

一人暮らしでなければ、同居人や家族と話し合うようにしましょう。

ライフプランとも関わるため、どこに住みたいか、どこに住む必要があるのかをきちんとすり合わせることが重要です。

(2)家の片付け

具体的な計画を立てる前に、今住んでいるところにある物や財産の整理もしておきましょう。自分は何をどれだけ所有しているのかを確認し、片付けるところから始めるべきです。

終の棲家を自宅以外に定める場合でも、また遺品整理を行う際にも、家を片付けておくと楽になります。

(3)生前整理に悩んだ時の相談先

社会福祉士や司法書士、生前整理業者(認定資格)への相談が考えられます。

それぞれ得意分野があるので、必要とする知識を持つ相手に尋ねるといいでしょう。

まとめ

どこにどう住むかは、それに伴うあらゆる環境と密接に関わる重要なポイントです。

そのため、終の棲家を安易に決めてしまうと、後悔することにもなりかねません。

生前整理の一環として、上でご説明したような諸条件を考慮した上で、納得行く選択をするといいでしょう。